近年、自治体に行政評価導入がひろがりつつある。しかしいずれの自治体の方式も完全でないし、それぞれ特徴をもっており当該自治体が自己努力で開発してきたものである。したがってこれから行政評価方式を導入しようとする自治体も、先進自治体の事例を参考にしながら、入していかなければならない。
問題は行政評価システム は、行政運営手法の一つの技術であるが、それを成功させるには、行政評価システムをなぜ導入するのか、どうして導入しなければならないのか、いかにして導入していくのかという思想、そして戦略がなければならない。
いまなぜ政策評価が、広がりつつあるのかといえば、まず第1に、自治体行政のビッグバンである。自治体行政の科学化は、実は非常に遅れている。自治体の自己改革を実践していくためには、民主化と科学化がパラレルで実施されなければならない。すなわち自治体行政への外圧と内圧の双方の作用が不可欠なのである。自治体は行政評価システムによって、行政活動を数値化し、自治体自身が行政改革を遂行することが、焦眉の懸案となってきたのである。
第2に、自治体運営のシステムの変革である。従来の行財政運営をみると、運営システム・戦略においてきわめて拙劣であった。これまで自治体の公共投資をリードしてきたのは、事業決定における財源主義・支出主義であった。自治体が財政規模を縮小しても、事務事業の選択の最適化を図っていけば、市民・地域ニーズの充足度の増大は可能なのである。成果主義によると、財政支出の膨張というみせかけの効果よりも、当該投資・サービスが、どれほど市民・地域ニーズを充足したかという、実質的効果が判断の基準となる。
自治体が行政評価システムは、自治体行財政運営の自己改革のための不可欠のシステムであることを認識して自治体の民主化・科学化のためにより高度に完成されたシステムの創造に努力することを期待する次第である。
本書がそのような自治体の行政評価システムの導入・向上に参考になれば、監修者の幸いである。
本書は、行政の担当者が真剣な議論をして作りあげてきた事務事業評価・行政評価の評価基準、評価調書等の書式、様々な行政分野の評価表などの貴重な資料、そしてすぐれた先進事例の開発者の取組み戦略や工夫した点などをできるだけ具体的に紹介したい。
そして関係者の今後のシステム開発に役立てたい、という主旨でスタ-トしました。そのプロセスの中、高寄昇三氏から本書のテ-マをいただきました。
さらに、少し過激とも思われる『ビッグバン』、『自己統制の確立』という副題を頂戴しました。
しかし、これも本年(2000年)4月から始まる地方分権推進法施行によって具体的に進むことを考えますと、当然のことかと思います。
まずは、ご多忙の中執筆をお引き受けいただきました執筆者の方、特にご多忙の中新規に書き下ろしを引き受けていただいた宮城県と岩手県の担当者、さらに監修の高寄昇三氏に厚く御礼申し上げます。
ややもすれば行政の業務では、日常の事務事業に対して市民ニ-ズを的確に捉えていると思いがちです。はたしてそうであろうか。本書に執筆している自治体は、その様な原点を大切にして取組んできました。そこで、まずは始めてみよう、というのが発刊のねらいです。
行政評価は指標を最終的に数値化していくことに最大の特徴がある訳ですが、そこに至るまでの評価指標の作り方やプロセスが大事なのではないでしょうか。
その点、先進事例の取組み方、経緯には学ぶとことが非常に多いと思います。
先例が少ない中、暗中模索で、手間をかけながら、ひとつひとつオ-ダ-メ-ドの発想と作業で作ってきました。
その過程で事務事業をいろいろな角度から再点検することになったのです。手間がかかり、目に見えるような直接的な効果がすぐには出なくても、この作業は市民に必ずや歓迎されるし、また担当者にとっても決して無駄にはならないのではないでしょうか。
本書は資料集ですから、本文資料を参考にして、ついマニュアル的に導入をしようと考えがちなのですが、これをそのまま流用するのでなく、一つ一つ現場を優先して、また新しくシステム開発する先駆者の自覚をもって取組んでいただくことを願っております。