行政サービス・手続の電子化

1994年12月に、「行政情報化推進基本計画」が閣議決定され、以後、行政情報化が重要な行政課題として、政府全体で取り組まれるようになる。1999年10月には、ミレニアム・プロジェクトが内閣総理大臣決定され、翌月には、経済新生対策が閣議決定され、電子政府の実現が国家目標とされている。このような行政情報化政策は、行政情報の電子的提供、政府調達手続の電子化、行政事務のペ－パ－レス化等多岐にわたる。

2000年8月には、情報通信技術革命に対応した地方公共団体における情報化推進本部決定である「IT革命に対応した地方公共団体における情報化施策等の推進に関する方針」が公表され、同年12月には、自治省（現総務省。以下同じ）の地域IT推進本部から、「地域IT推進のための自治省アクション・プラン」が公表され、電子政府・電子自治体の推進に向けて、国をあげて取り組む方針が明確にされている。

行政情報化は、それ自体が究極の目的であるわけではなく、より上位の目的に奉仕するための手段である。より上位の目的とは、実効ある市民参加の実現、行政情報の公開によるアカウンタビリティの実現、行政の効率化による行政改革の実現等である。行政情報化施策は、常に、この上位の目的に照らして、必要性、有効性等を検証しながら進められなければならない。

本書は、情報法を専門とする研究者、行政情報化に造形の深いコンサルタント、行政手続と密接な関わりを持つ行政書士、地方公共団体において電子自治体の実践に携わってきた職員が、分かりやすく、行政情報化の意義と実務上の問題点、課題等について論じたものである。行政手続・サ－ビスの電子化を検討する国・地方公共団体の公務員はもとより、職業上行政手続の電子化と深く関わりを持たざるを得ない行政書士、司法書士、税理士等や行政機関に対する申請・届出等を行う法人、個人等、多くの方に、本書をご利用いただき、行政手続・サ－ビスの電子化は、何のために、そしてどのように行われるべきかを理解していただくことを念願している。