資料シリーズ(書籍)のご案内 (まちづくり資料シリーズ、シリーズ・内発的発展)
まちづくり資料シリーズ28 「地方分権」 巻9
「プライバシーの保護とセキュリティ」 PART II
個人情報の悪用から市民を守るための情報管理―
大量閲覧防止の情報セキュリティ
[監修] 宇賀 克也/東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
書籍の概要
体裁 |
A4判/約272頁 |
発刊 |
2006年3月2日 |
定価 |
9,500円(本体価格)+税 |
著者
※役職は講演
又は執筆時 |
大井 良彦/東京都千代田区 区民生活部 戸籍住民課長
大月 勇次/市川市 市民生活部 市民課長
大澤 一美/小平市 市民生活部 市民課長
宇賀 克也/東京大学大学院 教授
奥津 茂樹/情報公開クリアリングハウス 理事
坂井 勇一/熊本市 市民生活局 地域振興部 市民課
増渕 俊一/草加市 総務部 自治推進課
小貫 昭和/横須賀市 企画調整部 情報政策課 主任
諸橋 昭夫/行政情報研究所 所長 |
協力 |
新谷 真秀/府中市 選挙管理委員会 事務局長
中村 一郎/東京都杉並区 区民課長 |
申込方法 |
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書籍の内容構成
●監修にあたって
2005年4月1日より、個人情報保護関係5法が全面施行された。これに伴い、さまざまな分野で個人情報保護の要請が高まっている。個人情報保護関係5法は、今日の個人情報保護の社会通念に照らして、個人情報保護のミニマム・スタンダードを設定したものといえるが、個人情報保護関係5法の立案過程において、個人情報保護の要請が低い時代の立法を網羅的に見直して、個人情報保護関係5法により設定されたミニマム・スタンダードまで底上げする作業は行われず、この作業は課題として残されてしまった。住民基本台帳の一部の写しの閲覧を原則として何人にも認める住民基本台帳法の規定は、個人情報保護の水準の底上げが必要な典型例であるといえる。
住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度の見直しは、地方公共団体の個人情報保護の水準に照らしても不可欠であったといえよう。すなわち、市区町村においても、2005年度末までに個人情報保護条例制定率が100パーセントになる見込みであるが、市区町村が保有する個人情報を本人の同意なしに営利目的で利用する者に提供することは、個人情報保護条例では認められないからである。もし、住民基本台帳の一部の写しの閲覧を原則として何人にも認める規定が住民基本台帳法に置かれていなければ、市区町村の個人情報保護条例が適用され、それに従えば認められないはずの個人情報の外部提供を、条例に優先する住民基本台帳法の規定のために容認せざるをえないというジレンマに現場の職員は悩んできたのである。住民の個人情報保護意識の高まりに応じて、ダイレクトメール等の営利目的のために住民基本台帳の一部の写しの閲覧を認めることへの住民の苦情も増大し、また、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度を利用して作成された種々の名簿が「振り込め詐欺」等の犯罪目的に利用されているのではないかという住民の不安が募っていった。そして、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度を利用して母子家庭を探索し、少女に対する暴行を行うという犯罪が明るみに出たことにより、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度の問題点が広範に認識されるようになった。
地方公共団体の現場では、閲覧手数料の値上げ、閲覧時間・回数の制限等、住民の個人情報保護のための努力が積み重ねられてきたし、熊本市のように対象者を特定しない営利目的での利用は原則禁止する条例を制定したものもある。しかし、根本的には、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度自体の見直しが不可避であるといえよう。
本書は、住民基本台帳の一部の写しの閲覧制度、選挙人名簿抄本の閲覧制度について、先進的地方公共団体がいかに取り組んできたか、これらの制度の見直しはいかにあるべきかについて論ずるとともに、個人情報保護のためのセキュリティ全般についても取り扱っている。
本書が、地方公共団体の職員のみならず、個人情報保護、情報セキュリティに関心を持つ方々の参考になれば幸いである。
2006年1月17日 東京大学大学院法学政治学研究科 宇賀克也
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●編集を終えて
2006年1月開会の通常国会で、住民基本台帳法の改正が成立すると、住民基本台帳はこれまでの原則公開から原則非公開となります。これは、近年個人情報を悪用した事件・犯罪への不安にさらされてきた市民にとっても、個人情報の保護に熱心に取り組んできた自治体にとっても、待ちに待った出来事と言えるのではないでしょうか。
自治体の個人情報保護政策において、住民基本台帳の閲覧制度は、非常に悩ましい問題であったと言えます。個人情報保護条例よって個人情報の管理や運用を厳格化する一方で、住民基本台帳等の閲覧制度が、不正に利用されるおそれがあるにもかかわらず外部提供しなくてはならないという矛盾を引き起こしていたためです。そのような矛盾を解決しようと、住民基本台帳法の許容範囲内で大量閲覧の制限に挑戦しているのが、本書で紹介している市川市や小平市、杉並区、熊本市などです。今後、住民基本台帳が原則非公開となれば、閲覧者の例外規定などについての具体的な制度設計が重要となります。閲覧主体、閲覧目的を含めた事前審査、情報提供後の管理や利用状況、廃棄などに関する事後確認など、抜け穴のないきめ細かい対応が求められています。
次の段階として、戸籍法に基づく戸籍謄本の公開制度や住民票等の交付請求も残された課題となっています。戸籍法の改正については現在法制審議会戸籍法部会で検討され、戸籍謄本の原則非公開、住民票や戸籍抄本交付請求時の本人確認の実施等が議論されているようです。「なりすまし」によって取得した第三者の住民票を悪用した犯罪の事例があるように、早急に「底上げ」が必要な分野であると言えるでしょう。本人確認の実施など対策に乗り出した自治体もありますが、そのような自治体はまだまだ少数であると言えます。住民票や戸籍謄本(抄本)には世帯情報など、基本4情報よりセンシティブな情報が含まれており、一刻も早い対策を講じる必要があります。
一方、個人情報保護関係5法は施行から1年を迎えようとしています。自治体等行政部門を初め、銀行等企業において個人情報漏えいの事件・事故が相次いで起きており、法人等に加えて漏えいした個人にも罰則規定を設けようとしています。また、セキュリティに関する認証制度の普及やシステムの開発も盛んに行われていますが、あまり議論されていないのが、研修ではないでしょうか。立派な制度やシステムがあっても、それを使い運用する「人」に関する対策が不十分では機能しません。今後、個人情報保護制度の検証を行うに際しては、ミニマム・スタンダードへの底上げや過剰対応への見直しなどとともに、「研修」についても検討することも一つのテーマになるのではないでしょうか。
本書は、住民基本台帳及び選挙人名簿の大量閲覧の防止に取組んでいる自治体を始め、情報セキュリティ対策を含めた個人情報保護のポリシーやマネジメントを網羅する内容となっています。自治体職員、顧客情報を扱う企業、セキュリティシステムに関わる技術者等の関係者が個人情報の保護を充実・進展させる上で本書が手助けとなれば幸いです。
最後になりましたが、監修をお引き受けいただき細部にわたりご指導くださった宇賀克也氏並びにお忙しい中快く執筆を引き受けてくださった著者の皆様に厚く御礼申し上げます。
2006年2月17日 製作スタッフ
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