資料シリーズ(書籍)のご案内 (まちづくり資料シリーズ、シリーズ・内発的発展)
まちづくり資料シリーズ28 「地方分権」 巻11
防災力向上と実効性ある災害時要援護者支援対策のために―
災害弱者の救援計画とプライバシー保護
~先駆自治体に学ぶ防災・福祉・情報部局の連携と個人情報の管理・活用・共有化~
[監修] 宇賀 克也/東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
鈴木 庸夫/千葉大学 法科大学院 教授
書籍の概要
体裁 |
A4判/245頁 (写真・図・表・資料多数) |
発刊 |
2007年9月28日 |
定価 |
11,000円(本体価格)+税 ISBN 978-4-925069-50-2 |
著者
※役職は講演
又は執筆時 |
宇賀 克也/東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
鈴木 庸夫/千葉大学 法科大学院 教授
鍵屋 一/東京都板橋区 福祉部 板橋福祉事務所長
柳澤 信司/東京都渋谷区 危機管理対策部 防災課長
城野 仁志/山梨県 福祉保健部 障害福祉課 課長補佐
堀部 政男/中央大学大学院 法務研究科 教授
佐藤 和彦/東京都豊島区 総務部 防災課長
小貫 和昭/横須賀市 企画調整部 市民安全課 主査
福島 敏彦/東京都練馬区 危機管理室 防災課長
奥津 茂樹/NPO法人 情報公開クリアリングハウス 理事 |
申込方法 |
申込用紙(フォーム)に下記の所要事項を記入の上送付下さい。2~3日以内に発送致します。
■所要事項 : 勤務先、氏名、所属部課役職名、所在地、TEL、FAX、MAIL、支払方法、必要書類、等
■申込用紙 : お申込みフォーム FAX・メールでのお申込み |
書籍の内容構成
●監修にあたって
地震、台風、地すべり等による人身被害を防止するためには、高齢者・幼児・障害者等の要援護者を早期に発見し、避難を支援することが重要である。そのためには、要援護者の名簿を作成し、要援護者の避難を支援する防災部局、消防団、民生委員等が当該名簿を有効に活用して効果的な避難を支援することが期待される。しかし、要援護者であることは、センシティブな個人情報であり、プライバシー情報である。その名簿が悪用されれば、深刻な被害が生じかねない。災害時要援護者名簿の作成とその利用・提供を行うためには、災害時要援護者の支援の要請と個人情報保護の要請の適切な調和点を見出す必要がある。本書は、この困難な課題について、様々な観点から、課題と対策について論じたものである。本書の特色は、防災部局や個人情報保護部局の自治体職員から現場の実情について詳細な紹介を受け、それを踏まえた議論を行っている点にあり、同様の課題の解決に悩んでいる自治体にとって、大いに参考になるものと思われる。また、個人情報の利用と保護のバランスをいかにとるかという問題について一般に関心のある方にも、本書を参考にしていただければ幸いである。
2007年8日 東京大学 宇賀 克也
●監修にあたって
最近は地震も多く、日本列島がまさに火山列島だということをあらためて知らされる思いだ。しかし、いざ自分の住んでいる街がやられない限り、なかなか他山の石とすることはできない。私自身もそうだが、実感したくないからだ。しかし防災行政はいまや避けて通れない政策課題だ。自治体における防災行政の本質は、どこまでが行政の仕事で、どこまでが住民自身の責任か、その線引きをすることである。だが、これがとても難しい。担当者の苦労もここにある。
この難問に一つの目安を与えてくれるのが、防災要援護者対策と呼ばれるものである。災害に際してもっとも弱い立場にある人々に対してどのような支援が必要なのか。支援の量や質、支援の調達、支援体制の組み方まで、要援護者を軸とした対策をたてると、そこにおのずと健常者の、つまりは普通の住民の支援体制も見えてくる。防災行政における要援護者対策が、こうして、可視的になると、防災対策や減災対策も具体的になり、防災行政における「自助」「共助」「交助」についても種々の約束ごとが決まってくる。要援護者対策は防災行政のキイとなる政策なのだ。
そこで防災行政を考える場合、二つのことが課題になってくる。ひとつは防災条例を制定すべきかどうかだ。従来、防災行政については災害対策基本法に基づく地域防災計画がメインのツールで、これによって防災行政の柱が決められてきた。しかし、先進自治体は、このところ防災条例を作り始めている。防災計画はあくまで、行政側の計画であって、住民の自助や共助などはあくまで行政の要請に過ぎないと受け取られるからだ。住民も巻き込んだ先進的防災条例の場合は、住民や事業者の責務規定なども盛り込むことが出来る。また条例に基本的な防災指針を規定した場合は、担当者が代わっても、この指針に基づく政策はぐっと安定したものになる。さらに条例によって自治体内部でも災害対策が重要なアジェンダになって、政策選択上のプライオリティも格段に高くなる。予算も獲得しやすくなる。このようにして防災条例も災害対策基本法とは独立して、しかも連携して地域防災力高める重要なツールとなりつつある。第二に、最近話題の個人情報保護との関係もこうした地域防災力をいかにして高めるか、という観点から議論される必要があることだ。インターネット時代に入り、個人情報保護の問題は質的に変化した。個人情報のプライバシーを広域的に、いや全世界にばらまくことも可能な時代である。個人情報の保護に過剰反応が起きるのも当然なのである。しかし、センシティブなものを含めて、個人情報なしに地域の防災力を高めることは不可能だ。自治体は町内会や自治会を信頼できるものにしていく一方、こうした共助の担い手による個人情報の管理もしっかり固める必要がある。
この本は防災行政に深く関ってこられた自治体の職員による実務報告と研究者による理論的な問題提起や議論を整理し、まとめたものである。防災行政の難しさがここにはたくさん詰められている。本当の知恵を持つ者は自分の力の限界を痛感できる人である。この本にはこうした知恵者の知恵と困難さを乗り越える知恵がいっぱい詰められている。是非一読をお勧めしたい。
2007年8日 千葉大学 鈴木 庸夫 |
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