資料シリーズ(書籍)のご案内 (まちづくり資料シリーズ、シリーズ・内発的発展)
まちづくり資料シリーズ28 「地方分権」 巻10 公共入札制度の改革 Part2
談合規制強化と制度(独禁法・官製談合防止法、公益通報者保護法、品質確保法)への対応
進化する公共入札・調達システム
―業務・制度の改革と運用
競争性と品質の担保、公正性とアカウンタビリティと行政効率化の担保
[監修] 鈴木 満/桐蔭横浜大学 教授
書籍の概要
体裁 |
A4判/184頁 |
発刊 |
2007年2月22日 |
定価 |
9,500円(本体価格)+税 ISBN978-4-925069-99-1 |
著者 |
鈴木 満/桐蔭横浜大学法科大学院教授/弁護士 (元.公正取引委員会 首席審判官)
正木真一郎/明石市 産業振興部 次長 兼 商工労政課長 (前.財務部 契約課長)
磯田 康一/松阪市 総務部 契約監理課長
堀内 秀/長野県 経営戦略局 公共事業改革チーム チームリーダー (現.土木政策課 技術管理幹)
井上 博夫/岩手大学 人文社会科学部 教授・市民オンブズマンいわて会長
阪口 徳雄/公益通報支援センター事務局長 (弁護士)、談合防止センター
佐藤 清彦/横須賀市 財政部 参事・契約課長 (現.企画調整部 企画調整課長)
前田幸一郎/横須賀市 企画調整部 情報政策課主査 (現.企画調整課) |
申込方法 |
申込用紙(フォーム)に下記の所要事項を記入の上送付下さい。2~3日以内に発送致します。
■所要事項 : 勤務先、氏名、所属部課役職名、所在地、TEL、FAX、MAIL、支払方法、必要書類、等
■申込用紙 : お申込みフォーム FAX・メールでのお申込み パンフレット(PDF:722KB) |
書籍の内容構成
●監修にあたって
公正取引委員会の竹島委員長は、平成19年の年頭あいさつにおいて、平成18年1月4日から施行されている改正独占禁止法について、「これまでのところ,今回の改正により期待された効果が着実に現れてきている」旨、「課徴金減免制度については,昨年1月4日から3月末までに26件の申請があり、それ以降もおおよそ月に4,5件程度の申請を受けつけている状況にある」旨、「今般の独占禁止法改正が社会に与えたインパクトは非常に大きく、ゼネコン各社等による『談合からの決別宣言』といったこれまでの『横並び・談合体質』からの脱却に向けた動きも出始めている」旨述べ、その成果を強調している。改正独占禁止法の評価はこの委員長あいさつでほぼ言い尽くされている感がある。
この「あいさつ」にあるとおり、大手ゼネコン5社は、平成17年12月末、談合と決別することを申し合わせ、この申合わせに基づいて公共工事の受注担当者を配置転換するとともに地区単位の建設業界団体からの退会を進めており、し尿・汚泥処理メーカー7社は、平成18年4月、談合事件の発生を機に、し尿・汚泥処理事業の受注活動の停止に踏み切り、さらに、このうち1社は、独占禁止法違反の再発防止をより徹底するため、平成18年12月をもって、国・地方公共団体等発注に係る全建設工事事業から全面撤退する旨公表した。さらに、M社は、旧首都高速道路公団(現首都高速道路)などが発注するトンネル用換気設備工事の談合行為を最初に申告して課徴金免除の適用第1号となり、立入検査後に申告したI社及びK社は課徴金30%減額の適用を受けている。
一方、平成10年に横須賀市が本格的な入札改革を始めたのを皮切りに国や地方自治体においても実施されるようになった。本格的な入札改革とは、指名競争入札を全廃し、一定の能力があれば誰でも入札に参加できる一般競争入札を全面的に採用することである。指名制度を全廃することで、発注者が指名権を用いて発注者の意に沿わない企業を入札から排除することもできなくなる。その意味では、本格的な入札改革を行うことにより、談合が排除されるだけでなく、初めて発注者と受注者が対等の立場に立つことができるようになる。そして、「談合」と「政官業の癒着」と「政治家・公務員の不祥事」は「三位一体」で、本格的な入札改革の実施により談合がなくなれば政官業の癒着も不祥事もなくなるという関係にある。
このように、公共調達をめぐる環境変化は劇的である。
本資料は、このような環境変化にいち早く対応した先進的な自治体や学識識者が、その知識・経験を余すところなく披露したものであり、今後、地方自治体等が入札改革を進める上で大いに参考になると確信する。
また、こうした環境変化に企業側としてどう対応するかも重要な問題であり、対応を誤ると「負け組」になりかねない。その意味で、本資料は受注企業が、公共調達をめぐる環境がどのように変化をしているかを知る「道しるべ」になると思われる。
2007年1月18日 桐蔭横浜大学法科大学院教授・弁護士 鈴木 満
●編集を終えて
資料集「地方分権」シリーズも本書で10巻となります。1999年創刊の巻1「行政手続と監査制度」に始まり、情報公開、行政評価、電子自治体、市町村合併、個人情報保護、住基台帳閲覧と継続してきましたが、これらのテーマは、この間の自治体の行財政改革と地方分権、市町村合併の流れを表しているように思います。
公共入札制度に関しては、巻4「公共入札制度の改革~公正・透明性確保-先進事例にみる入札・契約手続改革~」を2001年に刊行しています。同年4月1日に施行した入札契約適正化法の概要や、既に制度改革に着手していた横須賀市を始めとした自治体の取り組みを紹介したものです。当時の横須賀市は、制度改革の第1ステップとして、一般競争入札への転換と郵便入札の導入等を図り、第2ステップである電子入札システムを稼動した時期にあたります。その後の第3ステップ、競争と品質の両立に向けた取り組みについては本書の第2編に紹介しております。
本書は、巻4に続く第二弾となりますが、入札制度を取り巻く状況は激変し、官製談合防止法の制定や独禁法の改正等により談合規制が強化されるとともに、談合事件に対する世論の関心の大きさが入札改革への追い風になっているようです。現在は、品確法の施行を受け、競争性と品質確保の両立について多くの発注機関で悩まれていると思われます。本書で紹介している自治体も例外ではなく、長野県の総合評価方式、明石市の工事品質評価型入札制度等、競争性を保ちつつ「良い仕事をする業者が報われる仕組み」づくりを目指して、文字通り「試行錯誤」を重ねています。その様子が、第1編第7章のパネル討論によく現れているのではないでしょうか。競争性と品質確保の両立を実現する入札制度に完成した形はなく、良い仕組みを求めて改革を断行していくことの必要性を強く感じました。
バブル経済の崩壊後、特に2000年前後からの規制緩和の流れは経済的効率性の追求が中心となり、現在その弊害が問題視されてきております。行政サービスにおいても行財政改革の下、コストつまり定量的なモノサシでの判断が中心になりすぎているように思われます。公共工事だけではなく、福祉や都市計画、交通といった人間の営みに関わる分野にも、数字では測れない定性的な評価も必要ではないかと考えます。「安かろう、悪かろう」は論外ですが、「高くても良いもの、必要なもの」にはお金をかける、公共工事においてその判断指標となる制度が総合評価方式等の品質評価システムになるのではないかと考えています。
最後になりましたが、監修の鈴木満氏には研修会の企画・開催からご支援をいただいております。著者の皆様にもご協力いただいて発刊できましたことを厚く御礼申し上げます。本書のもととなった研修会や編集時のやり取りを通して、著者の皆様の入札改革に対する並々ならぬ情熱に触れ、時にはその情熱に突き動かされて編集作業を進めてきました。本書が発注側の公的機関担当者だけではなく、応札される企業側、その監視役となる議員や住民関係者といった幅広い方々のお役に立つことを切に願っております。
2007年2月8日 編集部
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※タイトルを変更しました。
旧:「入札・公共調達の改革」 →新:「進化する公共入札・調達システム」(2007年2月9日)
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