空き家(マンション)対策の
　　　　　　　　　　　自治体政策体系化

　2014年7月に、2013年時点の空き家の最新統計（総務省「住宅・土地統計調査」）が発表されたことにより、空き家問題に対する関心が高まっている。空き家問題については、過疎に悩む地方を中心に、空き家に移住者を呼び込もうとする空き家バンクの取り組みが、10年以上前から行われてきた。また、各地で倒壊寸前の危険な空き家が増加したことで、ここ数年は、空き家所有者に適正管理を義務付ける空き家管理条例の制定が活発化した。

　条例の制定が急速に進んだことを受け、同様の内容を含む空家等対策特別措置法が2014年11月に成立した。今や、空き家問題は地方のみならず、全国的な課題となっている。法制定を受け、2015年以降は、国、自治体とも空き家対策に、より本格的に取り組んでいくことが求められる。

　本書は、空き家の現状を分析した上、必要な対策について撤去促進、利活用促進の両面から論じている。また、現在は空き家問題といえば一戸建てが中心であるが、近い将来、深刻化が予想される分譲マンションの空き家問題についても考察を加えている。さらに、空き家問題は、単に空き家の撤去、利活用という限定的な問題として捉えるべきではなく、今後のまちづくりの中で考えていく必要性についても論じている。いずれの論点でも、各地の様々な事例を紹介しつつ、その体系化を試みている。

　本書の構成は以下の通りである。第1章では、様々な統計をもとに空き家の現状と問題点を明らかにするとともに、国際比較も行いつつ、日本の空き家問題の特異性を浮かび上がらせる。第2章では、空き家撤去促進策について、現に講じられている様々な施策を検討し、どのような課題があるかについて考える。第3章では、空き家利活用促進策について、空き家バンクや定住促進策を中心に論じ、併せて近年活発化している空き家関連ビジネスも紹介する。第4章では、コンパクトシティ化の必要性が高まっている今後のまちづくりの中で、空き家対策をどのように進めていくべきかについて検討する。

　本書によって空き家問題の全体像を把握し、今後の施策展開やビジネス展開に何がしかかのヒントが得られるとすれば幸いである。なお、本書は、2014年10月1日に地域科学研究会で行った講演の記録に、大幅な加筆修正を加えたものである。講演では十分言及できなかった内容も、本書では加えている。また、本書は、2012年に刊行した『空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ』（日本経済新聞出版社）の続編的な内容ともなっている。併せて活用いただければ幸いである。

　講演記録の作成および本書編集の労をとられた地域科学研究会の緑川冨美雄氏、大石春奈氏には、大変お世話になった。深く感謝申し上げる。