資料シリーズ(書籍)のご案内 (まちづくり資料シリーズ、シリーズ・内発的発展)
まちづくり資料シリーズ25 交通計画集成 巻12
これからの都市と交通とまちづくり
公共空間利用の見直しと都市の未来像
[監修] 太田 勝敏/東京大学大学院 工学系研究科 教授
書籍の概要
体裁 |
A4判/231頁 |
発刊 |
1998年3月 |
定価 |
定価 9,514円 (本体価格)+税 ISBN 978-4-925069-77-9 |
執筆者
※役職は講演
又は執筆時 |
太田 勝敏/東京大学大学院 教授
岡 並木/評論家 (比較都市論)
高田 邦道/日本大学 理工学部 教授
山本雄二郎/高千穂商科大学 商学部 教授
呉 承勲/京畿大学校
黄 仁喆/ソウル特別市
中村 文彦/横浜国立大学 工学部 助教授
井田 均/日本経済新聞社
山梨 榮/武蔵野市 財政課長
伊豆原浩二/(財)豊田都市交通研究所 企画部長
赤澤 義遵/札幌市 交通環境対策部長
杉野 尚夫/名古屋市 市民文化部長
鈴木 春男/千葉大学 文学部 教授
木戸 伴雄/警察庁 科学警察研究所 交通規制研究室 主任研究官
上野 和彦/㈱日建設計 東京計画事務所 計画室長
引頭 雄一/(株)日本空港コンサルタンツ 計画第1部 部長
加藤 廣/(株)社会計画研究所 取締役
卯月 盛夫/早稲田大学 教授
内山 久雄/東京理科大学 理工学部 教授
伊東 誠/(財)運輸経済研究センター 運輸政策研究所 広報調整部長
久保田 尚/埼玉大学 工学部 助教授 |
申込方法 |
申込用紙(フォーム)に下記の所要事項を記入の上送付下さい。2~3日以内に発送致します。
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■申込用紙 : お申込みフォーム FAX・メールでのお申込み |
書籍の内容構成
序 章 [座談会:編集委員] 共生の時代の交通 ―これからの10年と自治体の役割を展望する
太田勝敏/岡並木/高田邦道(司会)/山本雄二郎(五十音順)
第1章 海外にみる都市と交通の考え方とその実際
1. 路面電車ルネッサンス
岡 並木 (評論家)
2. アムステルダムの都市政策と交通
高田 邦道 (日本大学)
3. 北米の都市計画としての交通 ~シアトルとオタワの交通まちづくり~
太田 勝敏 (東京大学)
4. [韓国]釜山広域市の緑色交通市民運動(GT)
呉 承勲 (京畿大学校) 黄 仁喆 (ソウル特別市)
5. [ブラジル]クリチバ市のバス輸送システム
中村 文彦 (横浜国立大学)
6. 欧米にみるまちづくりと交通計画 ~佐賀市タウンマネジメント構想への提案~
井田 均 (日本経済新聞社)
第2章 国内の注目すべき試み ~交通を軸としたまちづくりへの挑戦~
1. [武蔵野市]交通マスタープラン策定と実践への取組み
山梨 榮 (武蔵野市)
2. [豊田市]公共交通を利用した交通手段の転換実験
伊豆原 浩二 (豊田都市交通研究所)
3. [札幌市]公共交通を軸としたまちづくり ~そのソフトとハード~
赤澤 義遵 (札幌市)
4. [名古屋市]専用走行路の確保によるバス交通の改善 ~基幹バス・ガイドウェイバス~
杉野 尚夫 (名古屋市)
5. [国際交通安全学会] 高齢者の参加型交通安全教育の新しい試み ~ヒヤリ地図の方法と効用~
鈴木 春男 (千葉大学)
第3章 「交通まちづくり」に求められる新しい課題と展望 ~編集協力者からのメッセージ~
木戸伴雄/上野和彦/引頭雄一/加藤 廣/卯月盛夫/内山久雄/伊東 誠/久保田尚 (原稿受理順)
●監修にあたって
21世紀を目前にして、世界的な社会経済の変革が進んでおり、好むと好まざるとにかかわらず社会の潮流は、都市と交通のあり方を大きく変えようとしている。自然と環境、そして文化と歴史を尊重した中で、各個人がより人間的に豊かに安心して住み続けられる社会と都市の形成が、これからの基本的方向のように思われる。個人の自立的な選択と自己責任の下で、共同して自らのラィフスタィルに合ったコミュニティを形成し、都市づくりを進めることが大切となろう。
交通政策と交通計画は、そのような都市づくりのための主要な戦略要素であり、その意味で、人・環境・都市を焦点に進めるこれからの交通計画は、“交通まちづくり”を目指すものと言えよう。
現在直面している最大の都市交通問題は交通事故・渋滞・騒音・大写汚染問題等である。
さらに公共交通の衰退、交通弱者、および地方部のモビリチィ制約問題、市街地スプロールと中心商業地の衰退、そしてCO2排出等による地球温暖化問題などが新たな課題となっているが、いずれも自動車交通と深く関連して発生している。自動車が発明されて以来100年を経て、陸上交通分野からみて、20世紀は、前半は鉄道の世紀であったのに対して、後半はまさに自動車の世紀として社会を変え)都市を変えてきた。
しかし、昨年(1997年)12月の地球温暖化京都会議(COP3)に象徴されるように、現代の車社会は環境面から再構築が求められている。COP3で、日本は2010年前後で、1990年と比べて6%CO2等の温暖化ガスの排出削減を求められている。トレンド予測では、自動車の総交通量(台キロ)は、約40%程増大するとされており、単純な比例計算によれば車の台キロを1/3削減する必要があることを意味している。
モビリティ・二一ズが増大する中で、このような交通の削減は困難であり、自動車自体の抜本的技術革新が不可欠と考えられる。しかし、EV車やITSといったハイテク技術による進化した新しい“車”に頼るのみでなく、在来の交通手段や既存のインフラを上手に使う都市やライフスタイルを工夫していくことも重要である。
本書では、そのような視点から、総合的に交通まちづくりを進めている事例として、内外の多様な取り組みを紹介している。
ライト・レール・トランジット(LRT)やガイドウェイバスのような新技術だけでなく、車道の再配分により車中心の道路利用方式を変更したり、コミュニティバスのような市民に密着した公共交通サービスの改善をはかるもの、バスを基幹交通手段として都市形成の機軸におくもの等々、都市づくりと一体化した交通計画が成功していることがわかる。
いずれの事例からも、市民の主体的参加により協同して交通改善を進める交通まちづくりのプロセスの重要性が示されており、これからのまちづくりの鍵が市民、事業者、商店街などと自治体の連携にあることがわかる。
1998年3月3日 太田 勝敏
●編集を終えて
まず、本「交通計画集成」全12巻が完成しましたことに感謝の念で一杯です。思い起こしますと、この企画がスタートして約1年後の1995年10月28日に編集委員会を開催しました(忘れもしません。私自身は母の告別式で同席できませんでした)。その1年後の96年11月1日に第1回の発刊(巻1、4)をし、1年5ケ月後に第6回の刊行(巻7、12)を迎えることができました。非力な当会がこの大事業をやりとげられたのも、編集委員の力強い支援があったからこそです。そして、編集協力・執筆を担当された各位に支えられて全巻が揃いました。ありがとうございました。
この出版に当たって、私が最初に心掛けた(誓った)ことは、編集への満足度を7~8割に抑え、全巻刊行に全力を投入するということです。情報や資料、事例が十分確認しきれていない我が国で、果して12巻もの企画が成り立つかどうかには、スタッフ共々ハラハラ、ドキドキの作業でした。しかし、作業半ばにして、企画が日々充実していることを実感でき、見通しも立ち、創造的に取り組むことができました。当会としては、この大事業をスタートラインと位置付け、次の展開と発展を期したいと考えています。
さて、これからの交通まちづくりでは、これまでとは違った取組みが求められているのではないでしょうか。もちろん、高齢社会や都心空洞化、地球環境等の新しい課題、情報公開や市民参加、厳しい財政状況といった社会情勢からの一般的な制約は当然のことです。更に、これまでの技術論や施設づくり先行型の交通計画自体が、その内容やつくり方等も含めて見直しを求められているのです。
では、どうすればいいのかとなりますが、個人的には、次のことが大切ではないかと考えています。
- 市民の交通二一ズといった基礎的な調査に裏付けされた、まちづくりと連動したリアリティのあるコンセプトをつくること。
- 地域経済をより広くとらえ、コミュニケーション(交流)を活発にすること。
- 単体としての計画をシステムとしての交通計画とすること。
- 路線バス廃止や公共施設循環への対策といった対症療法型の従来の手法から、市民交通としての需要開発(創造)をめざすシステムとすること。
- 交通まちづくりには多くの関係者(市民、事業者、行政内部、外部機関、議会等)がいることを念頭に、コンセプト実現に向けて進めていくコーディネート力をもつこと。
- 議論やプロセスを大切にする推進組織を設けること。
以上ランダムですが、これらのことは交通まちづくりにとって避けて通れないことと考えています。当会は、そのための情報の提供、新しい考え方や手法の提案、交流の活発化、そしてアジアを初めとした国際交流などに貢献できる組織になりたいと願っています。そのネットワークの要としての役割を果たしたいものです。
最後に本資料集は、講演録づくりの藤原和夫氏と長かず子氏、リライト・レイアウトの北土社、入力編集の福島ワープロセンター、デザインのフロス、写真の故及川知也氏と米長仁氏、校正の久保昭子氏、索引の岩木正男氏、印刷のニッケイ印刷と実に多くのスタッフに支えられて刊行することができました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。長い間ありがとうございました。
緑川 |
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