資料シリーズ(書籍)のご案内 (まちづくり資料シリーズ、シリーズ・内発的発展)
まちづくり資料シリーズ25 交通計画集成 巻9
観光地域の交通需要マネジメント
文化遺産・自然資源の活用とまちづくり
[監修] 高田 邦道/日本大学 理工学部 教授
書籍の概要
体裁 |
A4判/186頁 |
発刊 |
1997年12月 |
定価 |
9,514円(本体価格)+税 ISBN 978-4-925069-74-8 |
執筆者
※役職は講演
又は執筆時 |
新谷 洋二/日本大学 理工学部 教授
高田 邦道/日本大学 理工学部 教授
黒瀬 英治/環境庁 自然保護局 皇居外苑管理事務所 次長
有馬 佳明/安曇村長
吉田耕一郎/運輸省 航空局 飛行場部 計画課 補佐官 (元.関東運輸局)
多田 正人/元.岡山県 警察本部 交通規制課 交通管制官
山口 健次/元.金沢工業大学 工学部 助教授
高橋 洋二/東京商船大学 流通情報工学課程 教授
浅井 浩/東京都板橋区 資源環境部 環境保全課 主査
吉田 功/三春町 都市整備課 係長
木戸 伴雄/警察庁 科学警察研究所 交通規制研究室 主任研究官
若林 勝司/陸運電機(株) 代表取締役社長 (工学博士) |
申込方法 |
申込用紙(フォーム)に下記の所要事項を記入の上送付下さい。2~3日以内に発送致します。
■所要事項 : 勤務先、氏名、所属部課役職名、所在地、TEL、FAX、MAIL、支払方法、必要書類、等
■申込用紙 : お申込みフォーム FAX・メールでのお申込み |
書籍の内容構成
第1章 地域資源の保全・活用と交通計画
1. 保存と開発の調和をめざして ~「城下町」の道路計画~
新谷 洋二 (日本大学)
2. 観光都市のTDM ~街並保全と交通計画~
高田 邦道 (日本大学)
3. 国立公園における自動車利用の適正化
黒瀬 英治 (環境庁)
第2章 環境の保全と交通計画の試み
1. [上高地]観光と自然保護の両立方策
有馬 佳明 (安曇村長)
2. [奥日光地域]自動車乗り入れ規制と低公害バスシステム
吉田耕一郎 (運輸省)
3. [倉敷市]観光交通の分散誘導と駐車場の有効利用
多田 正人 (元.岡山県警察本部)
4. [金沢都市圏]観光ピーク時における交通需要管理
山口 健次 (元.金沢工業大学)
5. [鎌倉市]歴史的観光都市のTDMと市民参加
高橋 洋二 (東京商船大学)
6. [板橋区]自治体の環境保全と低公害車の開発・普及動向
浅井 浩 (板橋区)
7. [三春町]新しいまちづくりの課題 ~歩いて楽しめる地域づくりと交通体系の確立~
吉田 功 (三春町)
第3章 観光都市インスブルック(オーストリア)の交通計画
1. 観光都市インスブルックの交通問題と交通の管理構想 (VKZ)
2. 観光行動に付随した交通問題と対応策のメニュー
木戸 伴雄 (警察庁)/高田 邦道/若林 勝司 (陸運電機)
●監修にあたって
本書は観光交通あるいは観光地の交通の運用のために交通施設をどうつくればよいか、またどう管理すればよいかをまとめたものである。
観光交通の問題は難しく、費用がかかるために、従来避けられてきたきらいがある。観光交通の問題が難しいというのは、観光交通需要が極めて大きいピーク特性をもつためである。観光地では、週末のピークに季節的ピークが加わった場合と、閑散期の平日とでは、交通需要に大きな差がみられる。一方、費用がかかるという問題は、ピークに合せると大きい施設になる点と観光地にふさわしい施設にすると材料的にも、デザイン的にも質を上げなければならないからである。観光に関するもう一つの大きな課題としては短期間での資金回収を目論むために、ピーク時には交通需要が集中して交通混雑を引き起こすうえに、ピーク時の料金が極めて高い。すなわち、リピーターの確保が難しい。そのうえ、わが国では、多くの観光地が東京をはじめとする大都市に直結する仕組みで開発を進めている。したがって、ある一定のブームが去ると、交通需要が極端に減少するため永続性に課題が残る。すなわち、観光交通のインフラ整備が難しいということである。
このように交通需要の片寄りによる観光交通に関してのインフラ整備が難しいうえに、歴史的遺産としての建築物や遺跡の移動が困難なため、道路幅員の拡大が街並みを破壊することになる。そのうえ、観光地の環境問題が問われている。道路が連続しているならば少しくらい悪路でもアクセス可能、家族などのグループでの移動に安価といった自動車の特性が自動車を観光交通の主役に押し上げた。しかし、観光地での施設供給の緩慢さと自動車利用需要の増大とが相まって交通渋滞、大気汚染などの問題を引き起こしている。
したがって、環境の保全を目指した交通計画が問われるわけで、国内外での観光地において交通需要マネジメントの実験が試みられている。本書ではこれらの事例分析を中心にとりまとめ、歴史的街並みの保存、自然環境の保全のためにいかなる交通システムを構築すべきかについて論じてある。しかし、残念なことに観光地でのこれらの交通計画の実験は、その評価に耐え得るデータが欠乏している。そのため、論理的、計数的に十分な詰めはできていないが、考え方の道筋だけは理解して戴けることと思う。これを機会に観光地での交通需要マネジメントが進み、より多くの都市での事例に基づいて議論でき、観光地の交通事情が改善されることを期待する次第である。また、このような事情であるので、今後のためにも読者のご意見、ご提案が寄せられれば幸甚である。
1997年11月28日 高田 邦道
●編集を終えて
5年程前、友人が正月を温泉で過したいが予約できないと言うので、知人の紹介で福島県の旅館を見つけた時のこと、正月ということもあって、1泊2食付きで1人約25,000円とのことで、悩むことなくあきらめました。これに交通費や昼食代、アルコール代が加わると、家族4人で2~3日過ごすと一体いくらになるのでしょうか。もっとも友人たちをみていても、盆や暮れを郷里で過ごすという家族が多いのです。伝統という側面があるにしても、この異常な料金・サービスが、交通渋滞や混雑があってもあえて郷里を選ばせているのです。
また「観光地」へ出かけて、もう一度行きたいという思いを抱くことは多くありません。大自然の中に建つケバケバしいホテル、道路やダムなどの土木構築物、ビルに囲まれた点としての歴史遺産等々数えあげれば際限ありません。加えて「食」が貧弱であること、衝動買いしたくなるような「土産物」がないことがあります。私は「観光」を「光を観る」と読み替え、その「光」は自然環境を含めた 「文化」であると考えています。すると、光り輝いて訪れる人に感動を与える「観光地」がどれ程あるのか疑問が沸いてきます。文化や自然は、本来その地域独自のものであるはずですが、その地域性は部分あるいは点に過ぎないのです。
さらに「交通」の問題があります。マイカーかタクシーでしか動き回れない環境と交通渋滞や混雑、排ガス、騒音といったことがあります。受入れる地域にとっては、滞在して消費が行われることが、暮らしにプラスとなるのですが、そのような観光地は少ないのです。もっと観光客の二一ズを把握し、それに応える交通システムとホスピタリティが求められていると思います。東京ディズニーランドは年間約1,800万人を集めますが、その約70%はリピーターということから学ぶことは多いはずです。歩行者や自転車、公共交通で非日常の世界を自由に歩き回れる、あるいは楽しみたくなる環境が大切になってきています。
余談ですが、観光地の食は、名物になると東京や大阪のデパート等に出品します。その地域で食べ買うことが重要なのです。また土産物、例えば日本茶は、価格が東京や大阪とほとんど同じです。地域が流通システムからもう少し自立する必要があります。
この資料集成も残すところ2巻となりました。編集委員はじめ執筆者に厚く御礼申し上げます。また原稿が刊行に間に合わないために掲載できない方もいました。お詫び申し上げますと共に、次の機会に期する次第です。
(緑川) |
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