資料シリーズ(書籍)のご案内 (まちづくり資料シリーズ、シリーズ・内発的発展)
まちづくり資料シリーズ33
進展する日本版
PFI Part2―
自治体版 Private Finance Initiative
―その戦略と実務
~公益事業の新しい枠組み、ポスト三セクに向けて~
[監修] 山内 弘隆/一橋大学大学院 商学研究科 教授 (PFI推進委員会 委員)
森下 正之/広島国際大学 医療福祉学部 医療経営学科 教授
書籍の概要
体裁 |
A4判/394頁 |
発刊 |
2003年6月30日 |
定価 |
15,000円(本体価格)+税 |
著者
※役職は講演
又は執筆時 |
山内 弘隆/一橋大学大学院 商学研究科 教授
森下 正之/広島国際大学 医療福祉学部 医療経営学科 教授
公田 明/みずほ総合研究所 事業本部 研究開発部 主任研究員
色摩 直人/神奈川県 総務部 財産管理課 リース・PFI担当 副主幹
山崎 正義/千葉市 市民局 生活文化部 消費生活センター 主幹
萩尾十四秋/福岡市 環境局 施設部 工場建設課 第2係長
大久保富夫/泉大津市 都市整備部 市街地整備室 室長代理
岡本 隆嗣/岡山県 商工労働部 IT産業推進室長
堀江 正憲/調布市 政策室 政策調整担当
浮ケ谷隆一/市川市 企画部 企画政策課 副参事
小林 雅彦/長岡市 福祉保健部 福祉総務課長
清水 正弘/東京都杉並区 保健福祉部 副参事
瀬戸山元一/高知市病院組合 理事 |
申込方法 |
申込用紙(フォーム)に下記の所要事項を記入の上送付下さい。2~3日以内に発送致します。
■所要事項 : 勤務先、氏名、所属部課役職名、所在地、TEL、FAX、MAIL、支払方法、必要書類、等
■申込用紙 : お申込みフォーム FAX・メールでのお申込み |
書籍の内容構成
●監修にあたって
PFI (Private Finance Initiative)は、これまで公的主体によって行われてきた公共サービスの提供を、民間事業者に委ねる事業方式であり、1990年代初頭にイギリスで導入され、道路等のインフラストラクチャー関連事業、学校、病院、刑務所等の整備運営事業等幅広い分野で採用されてきた。わが国でも、1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が制定され、2003年4月現在で22の国の事業、74の地方自治体の事業が進行中である。企画立案、調査段階のものを加えれば、その事業数は200を優に超えるものと思われる。
PFI事業の意義は、公共機関が行ってきた事業を総括的に民間に委ね、民間の資金、経営能力、技術的能力を活用することにより、国や地方公共団体等が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できることである。つまり、事業コストの削減やより質の高いサービスの提供が可能になり、支出に対して得られる価値という意味でのVFM (Value for Money)が向上するのである。この点に関し、わが国のPFI事業においても、民間が持つ潜在的な優位性を発揮させるためのさらなる環境の整備が急務とされるところである。PFI事業の特徴は、まず事業自体の総合性がその根底にあり、さらに公共主体と民間事業者の間の総括的な契約にある。
事業の総合性については、施設の設計、資金調達、施工、維持管理、運営を一体的に行うことによって、事業期間を通じての費用削減と、サービス品質の維持・向上が可能になることがその本質である。従来方式の公共施設の整備においても、公共側のイニシアティブにより総合的視点が加えられて来たと考えられるが、PFIの場合、民間が持つノウハウを生かすこと、それもサービスの質を含む総合的な指標を加味した入札プロセスによって競争的に行われることから、実質的なVFMの向上を期待することができる。
さらに、公共主体と民間事業者の総括的な契約によって、事業に対する責任の所在と、事業プロセスで生じる様々な事態への対応が明確になる。わが国の場合、欧米諸国に比べ、第三セクター等の形で公共主体と民間との協力関係が広範に行われてきた。しかし、周知のように、事業運営の責任体制が明確にならない第三セクターでは、その計画時点から事業リスクの精査がないがしろにされ、結果的に自治体が多大な負債を負わされるケースが目立っている。これに対し、PFIは、事業内容について事細かに契約を交わすことによって、このような問題を回避することができる。その意味で、PFIは第三セクターの一つのアンチテーゼと考えることもできる。
冒頭に記したように、PFI法の成立以来、わが国でも多くのPFI事業が行われている。事業の具体例を参照することによって、実務上のノウハウが得られるだけでなく、今後のPFIのあるべき姿、残された問題点が明確になる。本書は、以上のような認識のもとに、各自治体において行われた事例を紹介し、行政運営に対する示唆を得ることを意図したものである。わが国のPFI事業にとって一助となれば幸いである。
2003年6月16日 山内弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授
●監修にあたって
先ず「日本版PFIとは何であるか?」という問いに答える必要がある。自問自答を繰り返し、「英国のPFIの概念・定義に照らして、似て非なるものであるが、日本版PFIは発展途上にある概念で、いずれ英国のPFIと同一の軌道に乗ると楽観できる」との結論に達した。
日本版PFIを本ビジネスモデルの開発・所有者である英国の概念と比較検討すれば、上記の結論に達した理由の理解を助けるかもしれない。即ち、日本版PFIにおいて主要なBTO方式(Build, Transfer, Operate=民が建設し、即時官に譲渡し、民は運営委託を受ける)は、英国の原概念であるBOT方式と比較し、(官の民に対する)サービスの支払いを梃子に民の活力を長期にわたって、引出すことを担保する仕掛けを官が放棄する欠陥がある。本来は民の長期資金により建設されるため、25~30年間は民の資産である(官にとりオフバランス項目として取り扱われる)。更にBTO方式では、(施設を民から譲渡を受けた後は)官が定期的、計画的に大規模修理を行う可能性はゼロに近く、費用の事前積立を行うことは法的に困難である。本来なら定期的・計画的に行うべき施設の維持管理(民の施設ではごく普通に実施されている)に関わる費用は、これまでの入札方式で建設された施設同様に、パッチワーク的に取り扱われ、予算の調整便宜項目として処理される慣行が継続される。したがって短期間で公的施設の老朽化が進む問題は解決されない。
「民間施設の場合、税金問題が解決されない状況下では、止む無くBTO方式を選択せざるを得ない」旨が言い訳・理由として関係者により引用される事が多いが、これでは本来のPFIの長所を生かすことが出来ない。その反面、日本版PFIの実施のプラス・マイナス面を検討すると、第三セクター方式プロジェクトとは比較にならない程長所・利点が大きい、マイナス面も許容範囲に収まる。その評価内容には次のようなものが挙げられる。
通常の入札方式に較べ、日本版PFI取引の長所・利点は、(1) 透明性が高く、談合等の脱法行為が阻止できる、(2) VFM (バリュウ・フォ・マネー)の観点により、取引全体のコスト管理計算実施の慣行の定着が期待できる、(3) BTO方式は実質的に従来の入札方式で、官にとっては完成後の施設引渡し迄の期間の支払い猶予(3年程度)を受けるに過ぎず、民より譲渡を受ける費用は顕在化し、債務管理は容易である。地方自治体の場合、公的債務の総抑制枠組み内に入れられるため、この面でも透明性は確保される。
国と地方の公的債務残高の総額は、2010年頃までに1,000兆円に達し、2012年からの6年間で約500万人の団塊世代が高齢者人口グループに入る事態が予想される。このため、官が支えるキャッシュ・フローを梃子に、民間活力・資源の徹底利用を真剣に考える財政的必要性が高まるはずである。英国の発明した正統なPFIビジネスモデルの導入が必須である。この前提に立つと、日本版PFIを現在試行錯誤的に取組むことは、マイナス面が少なく、官民取引の経験や知識の蓄積に役立つというプラス面として捉える事が出来る。「明治の先達が英国を範に議会制度をはじめとして多くを学び、日本導入には試行錯誤の繰り返しを重ねた歴史を振り返るとき、PFIにおいてもこのようなアプローチが必要であるかもしれない」という結論はごく自然であると思われる。本書をこのような視点を交えて読んで頂ければ幸いである。
2003年5月吉日 森下正之 広島国際大学医療福祉学部医療経営学教授 |
●編集を終えて
本書は、当会の資料シリーズ29「日本版PFI」(1999年3月刊)のPart IIとして企画しました。前書はPFI法の成立前に発刊したものですが、製作当初はPFIという言葉(概念)自体がまだ広がっていませんでした。そのため主に、海外の事業や国内では借上方式などのPFI的取組みを紹介しました。ところが4年後の現在では、国と自治体を合わせて100近い事業が進行しており、既に施設が完成、運営を開始しているものもあります。
特にPFI事業は国よりも自治体が積極的です。それは、地方分権に向けた自立・自律への姿勢の現れとも言えます。本書に収録している自治体はPFI法成立前から先行して取り組んでいます。本書のタイトルを「自治体版PFI」とした理由はここにあります。さらに第3章にあるように、PFI先進国のイギリスで行われている教育や福祉、医療分野における導入事例も生まれています。
一方では、PFIが事業破綻した第三セクターの二の舞になるのではないかという警鐘も聞かれます。三セク事業の破綻原因は諸処議論のあるところですが、公共と民間の役割・責任分担が不明確だったこと、土地を担保とする資金調達によりその返済が経営を圧迫したことが大きな理由だと思われます。ここ数年に経営破綻したリゾート型三セクがその後、米国の投資会社等によって運営を再開している様子をみると、その原因を考えてしまいます。
しかし、自治体側がPFI事業として企画はしたものの、具体的な計画づくり以前に中止をよぎなくされたり、事業者を公募しても応募者が少なかったりしたために、延期や中断に至った例も聞きます。その背景には、民間事業者側の厳しい判断と事業化への専門家の指導があるようです。ポスト・三セクの新しい手法として育て定着させる、という社会の流れが生まれてきているとも言えます。これまでとは異なる動きに期待を寄せたいものです。
PFIが資金調達やリスク管理などの点で、公共側にとっても三セクよりはるかに厳しい対応が求められることは、本書及び前書をお読み下されば理解いただけると思います。地方財政の危機的悪化の中で、PFIが単なる初期投資をおさえた割賦払いといった誤った認識をされることなく、新しい公益事業の枠組みとして普及していくことを願っております。
最後になりましたが、企画当初からご指導をいただきました監修の山内氏と森下氏の両氏、ご多忙の中を執筆いただいた著者の皆様に厚く御礼申し上げます。
2003年6月19日 地域科学研究会 (緑川/大下)
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