平成18年8月16日

大学における役員・教員・職員の個人情報の開示について
〜ミニ・アンケート調査の結果概要レポート〜

ゼネラル・マネージャー/主任研究員
青野 友太郎



1 はじめに

 個人情報保護法施行から1年後の4月21日(木)に開催した高等教育セミナー「個人情報保護対策の検証と進化」において,参加者各位に標記についてのミニ・アンケートを実施しました。

 調査の目的は,いわゆる“過剰反応”の実態へのピンポイントの検証です。個人情報保護法施行後,大学からの個人情報の開示は明らかに“過剰”に削減されております。そこで,廣潤社の『全国大学職員録』における2005〜07年度版への記載状況を切り口に,調査を行うことにしました。

 概要レポートはこちら

※全国大学職員録の掲載状況

  国立大学  公立大学  私立大学



2 調査の概要

「ミニ・アンケート<大学における個人情報の取り扱いについて>」


2−1 調査日

  2006年4月21日(金)
   アンケートA : セミナー開始前
   アンケートB : 最終講師講義前

 廣潤社の協力で1)役員(理事・監事),2)主要職員,3)教員について,国公私立の主要な101大学の3年間の推移データの提供をいただき,アンケートBとともに配布した。


2−2 調査対象者

  セミナー受講者26名
  (大学職員:20名,大学教員:2名,企業・その他:4名)


2−3 有効回答

  26人中23人(回収率88.5%)


2−4 調査項目

 全ての質問において,役員(理事・監事)及び主要職員の「職位」「氏名」の2項目,教員の「職位」「学位」「氏名」「生年」「最終学歴」「専攻科目」の7項目について調査しています。


アンケートA

Q1.あなたの個人的な見解として,大学としての個人情報の開示の可否についてお答え下さい。

   □公開すべき    □判断を留保    □公開は不要

Q2.貴大学の『全国大学職員録』(平成17年度版)への記載の状況はいかがでしたでしょうか。ご記憶の範囲でご記入下さい。

   □記載している   □不明(記憶にない) □記載していない


アンケートB

Q3.あなたの個人的な見解として,大学としての個人情報の開示の可否についてお答え下さい。

   □公開すべき    □判断を留保    □公開は不要

Q4.『全国大学職員録』(平成18年度版)への大学としての対応として,あなたのご意見はいかがでしょうか。

   □公開すべき    □判断を留保    □公開は不要



3 調査結果のポイント

3−1.受講の「前」と「後」での変化

・個人情報“保護”の講義及び『職員録』の記載状況データを踏まえても,主要項目についての変化はない。

3−2.役員(理事・監事)の「職位」「氏名」

・「公開すべき」(21人・22人)
・「判断を留保」(3人・2人)
・「公開は不要」(0人・0人)

3−3.主要職員の「職位」「氏名」

・「公開すべき」(18人・19人)
・「判断を留保」(3人・2人)
・「公開不要」(2人・2人)

3−4.教員の「職位」「氏名」「専攻科目」

・「公開すべき」(20人・22人・19人)
・「判断を留保」(2人・1人・3人)
・「公開不要」(1人・0人・1人)

3−5.教員の「学位」「生年」「最終学歴」

・「公開すべき」(14人・5人・9人)
・「判断を留保」(2人・6人・3人)
・「公開不要」(7人・12人・11人)

3−6.『全国大学職員録』への記載状況

・「不明(記憶にない)」及び「記入なし」への回答状況から、『職員録』の記載状況への認知度は65%となっている。

3−7.『全国大学職員録』への大学としての対応

A.役員(理事・監事)の「職位」「氏名」
 ・「公開すべき」(19人・20人)
 ・「判断を留保」(3人・2人)
 ・「公開不要」(0人・0人)

B.主要職員の「職位」「氏名」
 ・「公開すべき」(18人・19人)
 ・「判断を留保」(3人・2人)
 ・「公開不要」(1人・1人)

C.教員の「職位」「学位」
 ・「公開すべき」(17人・13人)
 ・「判断を留保」(4人・5人)
 ・「公開不要」(1人・4人)

D.教員の「氏名」「生年」
 ・「公開すべき」(19人・4人)
 ・「判断を留保」(3人・7人)
 ・「公開不要」(0人・11人)

E.教員の「最終学歴」「専攻科目」
 ・「公開すべき」(8人・18人)
 ・「判断を留保」(4人・2人)
 ・「公開不要」(10人・2人)


4 まとめと提言

・「大学の個人情報」の“保護”について、アンケート回答者(各大学のキーパースン)の見識によれば、明らかに“過剰反応”の事態が進行していることが検証された。

・廣潤社の作成データを見ると、関東及び関西の主要(オピニオン)大学で、理事・学長の「氏名」以外の全ての個人データの非開示が進行している。

・何らかの“談合”あったかの様であり、他大学からの「引き抜き」をおそれているかのようでもある。

・『全国大学職員録』は、長年の編集・刊行の実績において、我が国の大学世界の“共同財”としての役割を担っていると評価できます(すべきでしょう)。

・『全国大学職員録』は、個人データの側面のみならず、1.役員の人数や監事の常勤状況、2.法人及び大学の事務組織の構成と職名等の“大学のガバナンス”の状況の開示でもあります。

・小会としては、“けーし風”が『全国大学職員録』の平成19年度版から吹き荒れることを祈念しております。

以上

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