2015.8.12 新学校法人会計基準の運用と財務分析・説明責任
今月初め(一社)大学監査協会の監事会議が開催され、シンポジウムの司会役を務めました。講師の公認会計士・松本香氏に新会計基準に対応して、「監事はどのような点に注意をして監査にあたるべきか」を尋ねました。氏は、「今回の改正により、正味財産が表示されること、区分計算書の導入により財務状況がより明確になるので、大学経営に対する社会の眼が厳しくなることを意識する必要がある」と答えられた。
http://www.shidairen.or.jp/blog/info_c/management_finance_c/2014/11/21/16623(私立大学連「財務比率に関するガイドライン」)
この秋頃には、私学事業団の「財務比率」の最終版が通知される予定です。
≪区分計算書の導入による財務分析と経営診断≫ 文科省説明会の資料には、活動区分資金収支計算書と事業活動収支計算書を取り上げ、経営判断の事例が示されています。 私学事業団の財務比率(案)では、従来の12指標の改訂とともに新たに2つの指標を追加しています。こうした新しい財務比率の意味をどう理解し、経営に生かすかの検討が必須です。事業活動収支計算書では、「経営収支差額比率」及び「教育活動収支差額比率」です。貸借対照表では、「特定資産」の導入と「積立率」の分析です。 また、区分計算書の導入を機に、各法人において必要に応じて区分基準を工夫して多面的な評価を試みることもできます。たとえば補助金を別区分として学生生徒納付金と手数料で収支均衡状況を計算することにより、補助金依存度を調べることも可能でしょう。 ≪社会に対し適切な説明責任を果たす≫ 事業活動収支計算の各区分の収支差額の性質をどのように説明するかが大きな問題となります。とくに区分形式が企業会計と類似していることもあり、非営利組織である学校法人の区分計算書との違いを明確に説明することが課題です。 また、従来は消費収支差額をもって収支均衡と説明してきたものが、「基本金組入前当年度収支差額」が計算・表示されます。そうなると、どちらをもって収支均衡とするか、あるいはどのように違うのかについての説明に悩むところでしょう。基本金制度についても、区分計算書の導入で、従来からの問題が計算書上で表面化し、改めて基本金制度の理解が求められています。 一方、事業報告書の閲覧制度が設けられて10年を経過しました。事業報告書は法人の姿を映し出す鏡であり、各法人はつねに社会の目にさらされていることを自覚する必要があります。今回の会計基準改正を機に、事業報告書を社会とのコミュニケーションの有益な手段として、記載内容を大幅に見直し拡充する必要があるのではないでしょうか。 会計基準が大きく改正され、そのことによって業績が大きく変わってしまうという経験は、企業の世界ではすでに国際会計基準の導入などで経験済みです。学校法人の対応においては、財務担当者を始め、財務担当理事、理事長など執行部、さらには監事の方々も十分な認識を持って、適切に対処すべき重要な問題であると思います。 以上 |