政策直言トップページへ戻る

                                           2015.4.16

入試センター試験と新学力評価テストの検証のポイント


青 野 友 太 郎
高等教育経営計画研究所


  荒井克弘氏<前(独)大学入試センター 副所長 試験・統括官>に回答いただきました。

  1.検証の視点
  入試センター試験のどこが問題かを、まず明確にしたい。

  Q1.6教科29科目は多すぎるか?
  A.リスニングを1科目と数えると30科目になります。98%が進学する高校教育では、教育内容も多様化しているので、試験科目がある程度増えるのは当然のことです。また大学の側もさまざまな学部、学科を抱え、大学教育に必要とされる学力が多様になっています。イギリスの共通試験(GCE)では、100科目を超える試験科目が用意されています。30科目程度は、教育の多様性と公平性を確保するうえで、最低限必要な科目数ではないでしょうか。

  Q2.1点刻みはいけないか?
  A.成績の段階別表示は一般的には学力情報を減少させる手段であり、しか もその減少の影響が得点ごとに異なるという欠陥があります。現在のところ、段階別表示では試験の公平性を担保できないという限界があります。試験の一般的な問題として、得点の信頼誤差を論じるのではあれば、これはまた別ですが、信頼誤差を考慮する評価方法を現在のセンター試験に導入することは、現在の問題作成、実施方法では困難です。ただし、センター試験の成績をどう使うかは選抜主体である各大学・学部の判断に属することです。

  Q3.複数回の実施は必要か?
  A.いまのセンター試験では成績の等化ができませんので、複数回実施すれ ば、選抜するための資料としてむしろ不完全なものになります。複数回の試験の間に伸びた学力をどう評価するかについても、適切な調整方法は存在しません。

  Q4.全国の大学長及び学部長に「センター試験の改善・改革に係るアンケート」を至急、実施すべき
  A.答申の出るまえに、ある受験予備校がやっていましたが、答申後に、改  めてやってもらえれば、答申がどのように受け止められているか、有益な情報が得られるだろうと思います。

  Q5.全国の高校長に「センター試験の評価と改革への期待に係るアンケート」を至急、実施すべき。ベネッセ教育総研調査ではセンター試験廃止に賛成19.6%、反対は41.6%
  A.同感です。全国高校長協会でもやると思いますが。

  2.検証の視点
  今次の高・大接続=大学入試改革の基本理念はいかなるものか

  Q1.ユニバーサルな高校教育との接続
  A.もとより、アドミッションポリシーは各大学・学部が主体的に作成すべきことです。しかし、個別試験が後退し、高校教育の必履修科目が限界まで縮減されている今日、共通試験に課せられた荷が大きくなりすぎたところがあります。それぞれの役割分担を明確に、また適切にすることが必要でしょう。

  Q2.入試業務から教員の関与を縮減
  A.入学者選抜の原則は教育責任を負うものが決定することです。そのうえ で入試業務の在りかたを考えるべきでしょう。高大接続をより柔軟で、ユニバーサル化に即したものに変えて行くには、学力診断をいつでも何回でもできるようにするのが望ましいことは確かです。ただし、そのための準備と経費は膨大なものになります。長期的な計画が必要です。イギリスやドイツには学籍配分機関がありますが、将来的には、わが国も日本版UCASのような機能を果たす機関が必要になると思います。個別大学のアドミッション・オフィスはかなり早い時期に限界がくるでしょう。

  Q3.「大学入試センター」の公設民営化の推進
  A.「大学入試センター試験」は大学入試センターの試験であるという誤解が世間にありますが、これは参加大学が共同して実施する試験です。もちろん現在も、作題委員は全国から大学教員をリクルートしています。点検委員は大学教員だけでなく、高校関係者の委員もいます。作題委員は30科目で500人、点検委員は200人ほどになります。望ましい設置形態は独立行政法人ではなく、国公私立を超えた大学共同利用機関でしょう。

  Q4.職業実務教育の学習歴をどう評価して、高等教育機関に接続するか
  A.ドイツ、イギリス、フランスでこの試みが進んでいます。日本では推薦・AO入試がこれに対応していますが、将来は日本版UCASのような機関が担う役割でしょう。

  Q5.「合教科・科目型」及び「総合型」のテストの問題作成の専門家はいるのか
  A.専門家はいません。総合型を「適性検査」と解釈すれば、心理テストのグループにその種の専門家はいるでしょう。また入試としては、法科大学院適性試験や国際基督教大学の入試作成委員などが入るのでしょうが、学部入試の共通試験とは役割も条件も異なります。

  Q6.個別大学の入試改革のシナリオは
  A.中教審答申では、一般入試、推薦入試、AO入試の撤廃を提案していますが、どのような入試を行うかは各大学が決めるべきことです。

  Q7.“ポートフォリオ入学選考”という新たなコンセプトの創案を行う
  A.ボートフォリオと言っている、その中身が問題です。そしてその評価、判定について説明責任が果たせるかどうか、それが条件になります。

  Q8.アドミッションオフィサーは、一大学の専属である必要はなく、複数の大学又は学部と契約して、志願者とのマッチングを演出するという構想が如何
  A.高等教育の形態が変われば、そういう在りかたも可能でしょう。

  Q9.推薦選考においても、指定高校長のみではなく、同窓生OB・OGの推薦も可としたい。とにかく、当該大学・学部の情況を十二分に把握し、かつ愛校心ある人物を信頼し、委嘱したい。特に私立大学においては、透明なプロセスが開示されていれば、自由度は大である
  A.大学の主体的な判断があれば可能でしょう。

  Q10.日本版UCASの構想・コンセプトは如何
  A.日本版UCASの具体化には、日本の大学・短大など、高等教育のシステムが新たな「知の流通システム」として再生する必要があります。学力診断や学習者の興味・関心、学習歴の評価は技術的な基盤としてしっかりと設計される必要があります。

                                                         以上

政策直言トップページへ戻る