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                                           2015.1.9

活力ある大学教員人事の基本ポリシー
〜元気な21C型大学を担う人事施策の進化〜


青 野 友 太 郎
高等教育経営計画研究所


  ユニバーサル化とグローカル化,生涯学習社会化の進展の中で,各大学・短期大学におかれては,多様な学生層と新たな教育研究ニーズへの対応に精励のことと拝します。

  新・高等教育への実質的なステップアップのカギは,“教員の個人力”と“ファカルティの組織力”をサポートする「教員人事の活性化」と言えます。

  「教員評価」に先行して,やはり「教員人事」についての基本ポリシーが重要となります。いささか,独断的で恐縮ですが,いくつかのポイントを下記に論展します。

   <専任教員とは>
  ○大学教員は「大学という学校教育機関」の一員として,教育・研究を本務とする組織人
   (個人事業主でありたい人は私塾をおこすべし)
  ○専任教員は原則週5日は出校し,研究室をベースに終日,仕事に従事
   (研究日で出校しないのならば,“研究”室は不要)
  ○専任教員と称するためには,最低週3日は出校。他所に定常的な仕事を持つ場合は,任用
    契約において明確化
   (実務家教員は週1〜2日は実務職を継続)
  ○専任教員は,他大学等における兼任講師は原則禁止
   (多くの非常勤講師が専任教員への途)

   <教員の2大種別化と運営専門職化>
  ○教育課程は,専任教員の担当授業科目を主体に編成し,そのコアカリキュラムが自ずと
    “特色”
   (他大学教員の講義は,通信制受講又は夏・春学期の集中講義,及び単位互換方式)
  ○大学教員を教育系教員と研究系教員に2大種別化。大学は採用募集時にその別を明示
   (大学としては,教育系教員を優遇)
  ○教員の4大職務〜教育,研究,経営管理,社会貢献のウエイトについて,前年度に自己申
    告し,大学側と協議
   (教員の自主性・主体性の尊重)
  ○学長・学部長・学科長等は,教学運営の執行責任者としての専門職化
   (理事会が学長,学長が学部長・学科長を任命)

   <教育系・研究系教員の責務>
  ○教育系教員は「ティーチング・ポートフォリオ」を毎年作成するとともに,『教育紀要』
    に論考を執筆
   (ユニバーサル期の多様な学生に対応する新たな教員像)
  ○研究系教員は大学附属研究所・研究センターを本務とし,研究資金は国・公・民間の公募
    型外部資金を調達,企業等との共同研究
   (1人研究所方式・プロジェクトディレクター制の積極活用)
  ○大学院教員も教育系教員をコアとし,大学院生のTA指導強化による大学教員養成の拡充
   (大学教員の養成システムの高度化と教育力の向上は最重要)

<教員・理事評価と職業倫理>
  ○学生授業評価アンケートは学期の中間及び学期末に実施。卒業時及び卒業後3年,10年目
    にも実施
   (教員個人及び教員団としての活用)
  ○職員スタッフも,「教員評価」「理事・役員評価」に参画
   (身近にいる者こそ、よくみえる)
  ○『教員ハンドブック』を作成し,職業倫理とともに,組織人としての義務と責任の明確化
   (採用時・昇任時において,熟読後に誓約書にサイン)
  ○各学会の中に,「シラバス・テキスト作成」及び「教授法」の委員会を設置
   (専門分野認証の前提としてまず着手すべき)

<生涯学習社会での大学人の責務>
  ○中・高齢社会人を教育系教員に積極任用し,学生の人間性・社会性・市民性・キャリア力の
    養成
   (アカデミック系教員とのティーム・ティーチング授業も)
  ○短期インターンシップから,3カ月・6カ月の“コーオプ教育”に進化させ,多様な社会現場に
    おいて実務系客員教員を任用
   (2・5年制短大,5年制大学システムの創意・導入)
  ○大学教員は,「大学という学校制度」の制約の中で,“学識”の持つ本質的営みへの知的誠
    実性と自律主体性を保持すべしというアンビバレンツに立つ
   (知的コミュニティとしての大学キャンパスの再構築へ)

  以上のことがらは中教審・文科省とは無縁であり,貴大学・短期大学の理事会のガバナンスで実行可能です。
  ご健闘を祈念いたします。

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