ユニバーサル化とグローカル化,生涯学習社会化の進展の中で,各大学・短期大学におかれては,多様な学生層と新たな教育研究ニーズへの対応に精励のことと拝します。
新・高等教育への実質的なステップアップのカギは,“教員の個人力”と“ファカルティの組織力”をサポートする「教員人事の活性化」と言えます。
「教員評価」に先行して,やはり「教員人事」についての基本ポリシーが重要となります。いささか,独断的で恐縮ですが,いくつかのポイントを下記に論展します。
<専任教員とは>
○大学教員は「大学という学校教育機関」の一員として,教育・研究を本務とする組織人
(個人事業主でありたい人は私塾をおこすべし)
○専任教員は原則週5日は出校し,研究室をベースに終日,仕事に従事
(研究日で出校しないのならば,“研究”室は不要)
○専任教員と称するためには,最低週3日は出校。他所に定常的な仕事を持つ場合は,任用
契約において明確化
(実務家教員は週1〜2日は実務職を継続)
○専任教員は,他大学等における兼任講師は原則禁止
(多くの非常勤講師が専任教員への途)
<教員の2大種別化と運営専門職化>
○教育課程は,専任教員の担当授業科目を主体に編成し,そのコアカリキュラムが自ずと
“特色”
(他大学教員の講義は,通信制受講又は夏・春学期の集中講義,及び単位互換方式)
○大学教員を教育系教員と研究系教員に2大種別化。大学は採用募集時にその別を明示
(大学としては,教育系教員を優遇)
○教員の4大職務〜教育,研究,経営管理,社会貢献のウエイトについて,前年度に自己申
告し,大学側と協議
(教員の自主性・主体性の尊重)
○学長・学部長・学科長等は,教学運営の執行責任者としての専門職化
(理事会が学長,学長が学部長・学科長を任命)
<教育系・研究系教員の責務>
○教育系教員は「ティーチング・ポートフォリオ」を毎年作成するとともに,『教育紀要』
に論考を執筆
(ユニバーサル期の多様な学生に対応する新たな教員像)
○研究系教員は大学附属研究所・研究センターを本務とし,研究資金は国・公・民間の公募
型外部資金を調達,企業等との共同研究
(1人研究所方式・プロジェクトディレクター制の積極活用)
○大学院教員も教育系教員をコアとし,大学院生のTA指導強化による大学教員養成の拡充
(大学教員の養成システムの高度化と教育力の向上は最重要)
<教員・理事評価と職業倫理>
○学生授業評価アンケートは学期の中間及び学期末に実施。卒業時及び卒業後3年,10年目
にも実施
(教員個人及び教員団としての活用)
○職員スタッフも,「教員評価」「理事・役員評価」に参画
(身近にいる者こそ、よくみえる)
○『教員ハンドブック』を作成し,職業倫理とともに,組織人としての義務と責任の明確化
(採用時・昇任時において,熟読後に誓約書にサイン)
○各学会の中に,「シラバス・テキスト作成」及び「教授法」の委員会を設置
(専門分野認証の前提としてまず着手すべき)
<生涯学習社会での大学人の責務>
○中・高齢社会人を教育系教員に積極任用し,学生の人間性・社会性・市民性・キャリア力の
養成
(アカデミック系教員とのティーム・ティーチング授業も)
○短期インターンシップから,3カ月・6カ月の“コーオプ教育”に進化させ,多様な社会現場に
おいて実務系客員教員を任用
(2・5年制短大,5年制大学システムの創意・導入)
○大学教員は,「大学という学校制度」の制約の中で,“学識”の持つ本質的営みへの知的誠
実性と自律主体性を保持すべしというアンビバレンツに立つ
(知的コミュニティとしての大学キャンパスの再構築へ)
以上のことがらは中教審・文科省とは無縁であり,貴大学・短期大学の理事会のガバナンスで実行可能です。
ご健闘を祈念いたします。