政策直言トップページへ戻る 2021.12.8
私学高等教育の明日を拓く〜学校法人ガバナンス改革会議報告への“け〜し風”〜
地域科学研究会 高等教育情報センター 代表
高等教育計画経営研究所 常任同人
青野 友太郎
1970年代後半から、わが国の“まち・むらづくり”と“高等教育”に45年余、伴走してきた立場から、私学人・大学人に本レポートを提言します。
□ 前提
〇 私立大学・学校法人においては、「ガバナンス(統治)」ではなく、「マネジメント(経営)」の言葉を使いたい。
〇 学校教育法・私立学校法・私立学校振興助成法等の所轄庁である文部科学省と大学・法人の間で「ガバナンス」を使用すべし。
〇 学校法人のルーツは、“協同組合”と“財団法人”の2つの要素を含む“知の共同体”といえる。
〇 政策立案は、法制・運用の検証と大学経営の現状・実態に係る根拠・データを踏まえての審議・検討でありたい。
□ 大学・法人の不祥事案とその対処
A.学校教育法・私立学校法・私立学校振興助成法等の所轄庁である文部科学省と大学・法人の間で「ガバナンス」を使用すべし。
・不祥事案の類型は?
・役員の善管注意義務違反・損害賠償責任が問われた事例
B.所轄庁(文科省)の行政権行使の実績
・私大等経営費補助金の減額・不交付の措置
・報告・立入検査/役員解任勧告/措置命令/解散
・監事・理事・教職員・組合からの要請等の実績
・内部通報制度による通報の実績
C.裁判所による判例
・民事及び刑事事案としての法人及び理事等への処分例
→大学・法人内での処分は?
□ 役員(理事・監事)・評議員における大学人・私学人としての基本要件
選任にあたっては、下記を収録した『役員・評議員ハンドブック』等を事前に提供し、確認いただいた上での委嘱が重要となる。
・教育基本法、学教法、私学法、私学助成法等の法制体系及び法令の概要
・自法人の寄附行為及び学内の諸規程の概要
・自法人の創設者たちの想い、建学の精神、そして学園の歩みの概況
□ 大学・法人のステークホルダーとは
・第1次的には、学生・院生及び教員・職員
・第2次的には、保護者、同窓生、教職員・理事・評議員OG・OB
・第3次的には、地域住民(市民)、産業界、国民、世界市民
□ 改革会議報告書への異議
1.「論点」の冒頭の「目的:監督・経営を分離する。経営陣の利益相反・自己監視を排除する。」とある。「監督は評議員会、経営は理事会」と読める。
しかし「評議員会を最高監督・議決機関」とするとなると、「経営も評議員会」ではないのか?
2.学校法人の代表者は誰か、評議員会の長であるのか?「監事の(3)権限、義務等」では「法人・理事間の訴えで法人を代表する。」とある。
3.理事会・理事は「業務執行機関」となるのか?
4.評議員会(3人以上)と理事会(5人以上)の構成が意味する“ガバナンス体制”とは?
5.評議員・理事の「適格基準」として、「人格・資質・能力」等への要件付与は不要なのか?
「ふさわしくない非行」や「心身の故障」等は「選任・解任」条件レベルでよいのか?
6.「理事会は重要な業務執行の決定を理事に委任してはならない。」は、学長・教学担当理事への制約とならないのか?
7.監事の権限・義務として、「理事が不正の行為をし、……を認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。」とある。これは不充分であり「評議員会・理事会に報告・勧告」とし、さらに「所轄庁(文科省)への報告」を追記すべきではないか。
8.会計監査人の報酬額は、評議員会の議決事項ではないのか。
9.「評議員の選定」「理事の選任」に関して、「諮問委員会をおくことが望ましい」とあるが、実際問題として、その委員をどう選任するのか?
10.評議員が重要な意思決定を担うためには“常勤かつ高報酬”を必須とするのではないか?
11.監事について、最低一人は常勤とし、かつ内部監査業務から独立した補助スタッフを必要とする。内部監査室のスタッフが担当することは、理事長・理事との利益相反となるのではないか?
12.学校法人の根本規則である「寄附行為」を「定款」に変更することは、本報告を象徴する非文化的暴挙となる。
□ 情報公開
・役員(理事・監事)及び評議員について最新情報をHPで公表する。事業報告書の記載情報は、過年度の情報となる。
・非常勤理事・監事・評議員について、本属の組織名・所属部課名及びプロフィールについての情報公表を行う。
※ 私立大学の固有性・自主性と多様性を活かし、法令とソフトロー、そして寄附行為による政策シナリオが肝要である。
※ 法制とその運用とともに、やはり、固有の人物の見識が問われているといえよう。
2021年12月11日(土)緊急開催
「学校法人の原点と教学経営の自律力」 セミナー
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