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                                           2016.6.10

法科大学院の総括と進路の提言
〜法曹養成制度の再構築シナリオ〜


高等教育経営計画研究所  青野友太郎


  2002年1月末に、小会は「法曹・法律関連専門職養成と大学の使命」セミナーを開催しました。「法曹・司法書士・パラリーガル教育の新展開」がサブテーマでした。「日本社会の成熟と市民法治マインドの形成」について田村哲夫氏、「司法構造改革と大学・大学院教育の使命」について奥島孝康氏、「司法書士職務の拡大と人材養成リカレント教育ニーズ」について齋藤隆夫氏、「法学系大学・大学院の教育改革への期待」について伊藤真氏の各位が、ホットに論展いただきました。

  小会は質疑応答タイムに下記を直言しました。

  1.東京大学法学部の横やりで「日本の大学・大学院」制度は2度目の困難を招く。2年制の「既
   修者」コースは致命的な制度設計のミスだ。

  2.司法制度改革審議会答申には、アカデミック機関への批判も含まれていた。しかし「東京大
   学は米国と異なり、法学部段階で専門教育を実施している。だから、3年は不要」との弁。

  3.本来は、東京大学は法学部教育を再構築して、リベラルアーツや市民教養を拡充すべきでは
   なかったか? 優秀学生は3年卒でロースクールに入ればよいだけ。“4+2”でなく“3+3”シナ
   リオである。

  4.さらに「既修者」について、「法学士であること」「企業等で3年間の実務経験を有すること」な
   どの制限を課さなかったこと。自己申告であれば、「予備校」等での勉学の方が安上がりと
   なる。

  5.ロースクールのカリキュラム構成において、「発展・展開科目群」を組み込むことは、制度設計
   上ミスである。語学力・知財・医学などのスキルを既に有している者が「法律実務」を3年間履
   修するのが、本旨であった。法学部のみならず、全ての学部や社会人からも受入れるという
   APであったはず。

  6.法曹人口を年3,000人養成の目途で、ロースクール修了者の7割程度というならば、自ずと
   ロースクールの入定・収定の規模は確定される。高裁6ブロックにおける設置認可上の計画
   的整備は必須である。

  そして、この12年余りのロースクールの情況をみれば、その総括は明瞭と言えます。

  1.法科大学院の設置数
  ・当初の74校が、学生募集停止が32校となり、現在42校

  2.法科大学院の受験・入学数
  ・40,810人の受験者数が7,528人へ
  ・5,767人の入学者数が1,857人へ

  3.予備試験(2011年スタート)の受験・合格者数
  ・6,477人の受験者が10,334人へ
  ・116人の合格者数が394人

  4.司法試験の受験・合格者数
  ・37,873人の受験者が8,016人へ
  ・1,558人の合格者が1,850人へ

  5.法科大学院の退場シナリオ
  ・認証評価機関による評価ではなく、市場原則で退場へ
  ・中教審の特別委員会による評価及び補助金削減による政策誘導

  6.人材への社会ニーズ
  ・大手企業の「グローバル競争化下で、企業内弁護士を増大したい」ということで、年3,000人の
   養成を目指した
  ・しかし、企業における雇用が増大せず、年1,500人へと大幅減に
  ・企業ニーズに対応して、法科大学院は定員設定した訳であり、企業サイドの雇用責任を問う
   べき事項である

  さて、今後の法曹養成改革において、下記を提言したいと思います。

  1.予備試験の合格者を100人程度に制限するとともに、受験資格を明確化する

  2.法科大学院の「既修者」枠を廃止し、3年制のカリキュラムを再構築する

  3.実務家教員は、5年程度の任期付とし、「コーオプ方式」による現場実習のウエイトを高める

  4.司法修習の入口で、「判事・検事」コースと「弁護士」コースを区分する

  5.司法試験及び司法書士試験の各一次試験は共通試験にシフトとする

  以上、いささかラディカルなシナリオですが、政策直言とします。
                                                         以上

  是非とも、読者各位のご感想・ご意見をお寄せ願います。本コーナーに掲載させていただきます。

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